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地球の上の”門間ゆきの”さんのお話 後編

まずはこちらをお読みください。
こちらの企画についてお話しています♪

鹿児島と出会った話 

地球の上の”門間ゆきの”さんのお話 前編はこちら↓

最終面接まで、丸2日間フリーになった。服が足りなくなり、天文館の古着屋で900円と500円の2着を購入。ゲストハウスでは、将来は鹿児島で宿をするという北海道の男性や自転車で全国を回る通信制高校の男の子に出会った。いろんな目的でいろんな方向へ、旅をする人たちが一つ屋根の下に集う、人生の交差点みたいだった。

フリー1日目は春本旅館の美由喜ちゃんに誘われて、映画「ONE PIECE FILM GOLD」を見た。

「ワンピース、私、腕が伸びるやつ、程度の知識しかなかったんだけど、面白かった!『オレは諦めねえ!!!』って言葉で、絶体絶命も、それないやろってピンチも、希望と可能に変わる。友情と信じる心が全てに打ち勝つ、みたいな」

―最終面接の前にふさわしい

「そう、勇気がわいた。笑」

何年ぶりだろうか、プリクラも撮った。

午後は一人、観光バス「カゴシマシティビュー」で仙巌園に行き、自称“ミス桜島大根”のガイドのおばちゃんの解説を楽しんだ。JR日豊線と錦江湾の向こうに、桜島がきれいに見えた。

帰りのバスで同世代の台湾の女の子2人と仲良くなり、晩ご飯に誘った。「ローカルな店に行きたい」とイルカゲストハウスの女将・明美さんに相談して勧められたのが、昭和の香りただよう飲み屋街「名山堀」にある「とくちゃん」だった。

とくちゃん。名山堀には古き良き味のある店が並ぶ

がらがらーっと引き戸を開けると、おっちゃんがいっぱい。白い割烹着をちゃきっと着こなしたおばちゃん(こちらが「とくちゃん」)が、「どうしようかねえ」と見渡すと、すぐに奥から、「ここ入れるぞー」と声がかかった。

私たち3人が入れてもらったのは、東京から来ていた海上保安官のおっちゃんグループ。偶然、カウンターには台湾人の大学教授もいて、日本語、英語、台湾語でにぎやかになった。

「そこで”じっしょうさん”に会ったの!カウンターに座っていたおっちゃん。新聞社の凄腕カメラマンらしいんだけど…」

だいぶ出来上がっていた“じっしょうさん”は、私が新聞社の受験生だと聞くと、「一緒にはたらくぞ!」「おー!」「特集するぞ!」「おー!」と焼酎のお湯割りで何度も乾杯した。「島へ取材に行くときは、飛行機や船が欠便して帰れなくなることも多いし、コンビニがないからパンツは4枚くらい持っていけ」と大変具体的なアドバイスももらった。

次の日(フリー2日目)は、とくちゃんで出会った海上保安官のみくさんが、フィビちゃんとエンちゃんと私を桜島ドライブに連れて行ってくれた。

「ほかには、甲突川や回転寿司の『めっけもん』もよかった」

―め?!

「『いい物みーつけた』みたいな鹿児島弁。ネタはおいしいし、お皿もすてき。鹿児島の南北600㎞が書いてある。欲しくなって聞いたら、一枚千円らしい。笑 あと、板前さんがヨカニセ(イケメン)!」

甲突川は好きな散歩道
「めっけもん」の「ネギトロ桜島」(桜島を表現している!)(手前)。お皿には、鹿児島の本土から与論島まで南北600Kmの地図が書いてある。

そうして2日間羽を伸ばし、採用試験最終日を迎えた。

「朝から病院で健康診断があってね。『○○さーん』って呼ばれるのが聞いたことないやつばっかり!ご当地苗字かなあ。待ち時間長いけど飽きなかった。採血もあったんだけど、その前の晩、こってりの『豚とろラーメン』っ食べて飲まず食わずだったから、血液どろどろだったと思う…」

―笑

「しょうこママが、終わったら『そうめん流し』行こうって誘ってくれてたから、最終面接を乗り切った!」

―流しそうめん、ではなく?

「そう。ドーナツ状のプールの中をそうめんがぐるぐる回るの」

そうめん流し。こちらは唐船峡の写真

面接が終わると、しょうこママが会社の正面玄関に車を止めて待っていてくれた。春本旅館に寄ってご挨拶をしてから、ここちゃんの保育園のお迎えをし、お兄ちゃんのこうくん、パパも一緒に龍門滝のそうめん流しへ。生まれて初めて鳥刺しも食べた。鹿児島の甘めの醤油がよく合う(「アマメ」は鹿児島弁でゴキブリのことでもある)。

一家は空港の出発ゲートで見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。

「採用試験の帰りというより、親せきの家から帰るみたい。また来るねーって。本当に鹿児島住みたいと思った」

* *

 「鹿児島でいろんな人に会って、ここで、この人たちのために働きたいって思えた。縁もゆかりもなかったのにね。縁かな。自分を信じてあげるのは自分しかいない、と私が落ち込んだとき先輩が言ったこともちょっとわかるような気がした。あ、しょうこママがお土産に持たせてくれたのがこのラブリーね」

旅の出会いが詰まった「唐芋レアケーキラブリー」は、とびきりおいしかった。

* * *

1ヶ月半後、春本旅館は閉館。私は翌2017年4月から鹿児島で働き始めた。何かがなくなった跡には、虚しいくらい、そこにあったものを思い出せないものだけど、今はマンションが建つその場所に、おいしいごはんと温かいもてなしの宿があったことをくっきりと思い出す。

美由喜ちゃんとはまた“恋バナ”をし、しょうこママ一家とは「ぬれたんふ」を見に行く。海保のおっちゃんたちは就職祝いをしてくれた。じっしょうさんは「パンツの話」は覚えていなかったものの、就職を喜んでくれた。イルカゲストハウスは、「ただいま」と寄れる温かい居場所。

鹿児島に住んで半年後、「とくちゃん」から歩いて1分のところに小さな和室を見つけて名山町の住人になった。窓からは桜島が見える。家を出てすぐの、緑の芝生が和やかなみなと大通り公園が自慢だ。仕事で疲れても、とくちゃんのおでんをお腹いっぱい食べて、大きなおにぎりをお土産にもらって元気になる…。

みなと大通り公園。冬のイルミネーションがきれい

鹿児島で暮らして2年。あの日こめちゃんと作ったみその味噌汁をすすりながら、ほっこり思い出す。

いつ、どんな人と会って、どう感じて。自分という人間がどんな人との出会いから出来上がっているか―。そんなことを、こめちゃんと私は、ものすごく、一生懸命話す。人と人の縁の地図が、にょきにょきと出来上がっていく感覚は大切にしたいもの。

このバトン、次は、私に鹿児島との縁をくださった、吉本先輩に渡します。ハイッ

 

プロフィール
門間ゆきの(かどま ゆきの)
奈良一族に生まれるが愛知県名古屋市育ち。古都と寮生活に憧れて大学は京都へ。2017年4月から鹿児島の新聞社で働く。鹿児島で好きになった食の第一位はきんかん。

ハンモックスポット開拓中。
これまで試したのは…北海道砂川の子どもの国の緑地、名古屋市熱田の神宮東公園、京都鴨川、滋賀の琵琶湖畔・堅田の月影公園、和歌山加太の砲台跡、徳島県阿波池田駅前へそっ子公園、祖谷ふれあい公園、鳴門。

 

Group『Fire』前のお話
「地球の上の”増田友里さん”のお話」

Group『Fire』次のお話(予告)
→「地球の上の”吉本先輩”のお話」

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